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1960年代の近未来デザイン ~月にいけた時代の実力とは~

      2017/01/03

いつの時代でもその時代に重要とされ、国力や人的資源を惜しみなく注ぎ込まれた物の中に、後世から見ても十分に驚くべき水準レベルをもった物が多い。

古代で言えば、ピラミッドなどの古墳の設計には測量や天文学の高度な知識と多数の人員が用いられていた。現在でも技術的にはピラミッドの建設は可能である が、建設材料である石の確保から建設までの多大な費用と時間からしてそうおいそれと簡単にできる代物ではない。ましてや機械がなかった古代なら尚更であ る。また、ローマ時代の土木工学の高さも中世には失われた技術となるほど非常に技術レベルが高かった。

(世界遺産にもなっている3層式の「ガール水道橋」)

中世では多くの才能ある芸術家やその価値を認め保護したパトロン達によりルネッサンス文化が花開き、ミケランジェロやダヴィンチといった天才により素晴ら しい芸術作品の傑作が生み出された。イタリア国内で多くの芸術家が切磋琢磨した結果であろう。これは18世紀前後のウィーンのクラシック音楽にも当てはま る。モーツァルトを超える音楽家は今後誕生するのであろうか。

こういった「その時代だから可能であった」という物は現代でも珍しくない。例えば、アメリカでは冷戦下にソ連に対抗するために航空宇宙産業に惜しみない予算を投入し、最終的にアポロ計画によって人類が月まで到達する成果を導き出した。

(明治製菓のアポロ・アポロ計画の成果の一つ)

しかし、21世紀を迎えた現在において巨額の予算を必要とする航空宇宙産業を継続することは難しく、長らく人類は月から離れている。このままではいずれ「月に行った最後のアメリカ人が死去」というニュースが流れることも十分予想される。

さて、この1960年代のアメリカの航空宇宙産業は全盛期であったアメリカの国力を惜しみなく投入し、20世紀の人類の進歩を支えた「物理学」の成果を目 に見える形で具現化した物と言える。そういったわけで「時代を超える」60年代のアメリカの航空宇宙産業の実力を2機の航空機を紹介することでお見せした い。

まず、下の写真を見て欲しい。

もう一枚

これは、「XB-70」 通称「ヴァルキリー」と呼ばれる超音速爆撃機だ。この機体の凄いところはまずデザイン。なんというかこんなに格好いい機体が60年代にデザインされたのか?というぐらいに近未来的な格好良さを持っている。

もちろん見た目だけでなく、ヴァルキリーのその飛行性能は現在の米軍の戦闘機なども比較にならないぐらい凄い。その速度はなんと「マッハ3」そしてその航 続距離は12200㎞。これは東京からニューヨークまで到達することが可能であり、空中給油機を用いればソ連のあらゆる場所を往復することができる。

この機体のコンセプトは「核兵器を持ったままソ連領内に深く単独で侵入し、そしてソ連の迎撃戦闘機を超高速で振り切り、核攻撃任務を成功させて、無事に帰 還する。」というコンセプトで設計されている。冷戦時代の特殊事情を兼ね備えた設計であり、現在ではその必要性もない為に二度とこの様なハイスペックな機 体は誕生しないであろう。

ちなみにソ連奥深くまで到達する燃料と核爆弾を搭載する為に、機体は非常に大きな機体をしており、エンジンを6発装備した設計となっている。

(他の戦闘機と比べると巨大な機体・白い怪鳥)

さて、もう一機を紹介したい。

これは SR-71 通称「ブラックバード」と呼ばれる機体である。通称のブラックバードの理由は機体を見ていただければ、おわかり頂ける。このブラックバードは開発から50年近く経過した現在でも世界レコードを持つ凄まじい航空機である。

このブラックバード、世界最速の飛行機であり「時速3529㎞」飛行高度は2万5000メートル上空を飛行する。ちなみに限界速度の理由は「エンジンの限 界」ではなく機体の「窓ガラス」の強度の限界であり、これ以上は窓ガラスが圧力に耐えられないという理由による。

この飛行機は冷戦下でソ連の領土を領空侵犯しての強行偵察することを目的としているために、「より速く」そして「より高く」飛行することを目的としている。その為、飛行機の世界記録として実用としての「最高速度」と「最高高度飛行」の記録を保持している。

この機体設計はマッハ3を超える速度で飛行する為に航空力学の結晶として産まれた物であり、100%実用度重視の機体形状である。それなのに、とても50年近くの前のデザインとは思えないこの近未来的なフォルムにはただ息をのむ限りである。

このブラックバードは高々度での超音速飛行のために、驚くような逸話がある。まず、機体が摩擦熱対策のためにチタンをベースにつくられている。マッハ3を超えると機体の表面温度が700℃近くになるための対策である。

そして、超音速下における金属の熱膨張を考えて、常温では機体の間で隙間ができるようにわざと設計されている。その為、地上では燃料タンクから常に燃料が 漏れるという驚きの設計を採用している。その為、燃料漏れを防ぐために機体は極力燃料を積まずに離陸し、空中給油機から燃料を搭載した後に任務に就く。

(地上では整備員は大わらわ)

また、機体だけでなくパイロットにも対策が必要で、高々度飛行のためにパイロットが一人では着用ができないキツイ与圧スーツを着込むなど、各種対策に余念がない。

さて、この2機の機体、今見ても斬新な近未来的なデザインであるが、これも米国が冷戦下で国力を極限まで宇宙・航空産業に注いでいたからこそできた代物で あるといえる。現在では必要ないと言えば必要ないかもしれないが、この機体性能を超える航空機は開発されてはおらず、そういった意味で物理学が盛況を極め た20世紀を代表するハードウェアとしてのスペックの頂点を極めた機体であるとも言える。

21世紀は技術の進歩により航空機がよりソフトを重視する設計となっている。例えば、速さ重視の設計より、よりレーダーに写りにくい設計といった感じである。

(現在、飛び抜けた性能を持つ米軍最新鋭戦闘機 F22「ラプター」、だがデザインは・・・)

したがって、この様な近未来的な心躍るようなデザインの、そして航空業界の意欲的な夢のある機体は今後でてくることは難しいのであろう・・・・

(2010/07/23)

【おまけ】

(速さではなく、見えないことを追求したステルス機。
コンピューター設計を使用した新世代のエレクトロニクスの塊)

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