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~ヒストリアイ~

五大湖に浮かぶ空母 ~訓練空母セーブル~

投稿日:2016-05-03 更新日:

太平洋戦争の序盤、米軍は空母不足から運用できる空母をすべて作戦に投入してしまい、訓練に使用する空母がなくなるという緊急事態に陥りました。また、大西洋側ではドイツのUボートが飢えた狼の様に獲物を狙っており、訓練中に貴重な空母が撃沈される可能性があるために大西洋方面では空母の訓練は難しい状況に陥っていました。

そこで海軍の首脳は苦肉の策を考えます。それが「訓練空母」の登場です。

五大湖に浮かぶ豪華客船である「グレーター・バッファロー」と「シー・アンド・ビュー」という2隻の民間船舶をそれぞれ「セーブル」と「ウルヴァリン」という訓練空母に改造して就役させました。

(改装前のウルヴァリン)

この2隻は空母としての機能、例えば兵装や防弾設備など戦闘艦としての装備はまったく持ち合わせておりませんでしたが、飛行甲板が設置されていたために空母搭乗員の為の一番重要な訓練、つまり発着艦訓練を行うことができました。またあくまで“訓練用”なので飛行甲板は船の船体から大きくはみ出てた大胆な設計になっており、もちろん実戦では全く使えない代物でありました。

(飛行甲板が船から物凄くはみ出ている・・・)

この訓練空母は五大湖専用としたおかげでUボートの危険にさらされることがなく、また空母搭乗員にとって一番難度が高く危険な空母への着艦訓練を思う存分安心して行うことができました。その結果、終戦までにセーブルとウルヴァリンの2艦だけで、17,820名のパイロットが訓練を行うことができ、両艦合わせて116,000回の着艦を記録しました。

ちなみにブッシュ大統領(ブッシュシニア)もこの訓練空母に着艦しており、後に「生涯で最も寒い経験であった」と語っております。冬のミシガン湖の寒さと強風は相当堪えたのだと思います。

帝国海軍がマリアナ沖海戦の際に米軍の潜水艦に怯えて空母艦載機の発着訓練を行えなかったことを考えると、アメリカの合理主義と思考の柔軟性を垣間見ることができる船体である思いますね。

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