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中世ヨーロッパの生活① ~典型的な庶民の一生~

      2018/11/29

こちらの文章内にある段落末の (a) や (b) などの記号は巻末の参考文献の引用元です。出典が必要な場合に参考にしてみて下さい。また、同じシリーズで

②中世の食生活と農業について

③現代と比較した中世の日常生活
④中世ヨーロッパの「性生活」

を書いた文章もありますのでよろしければ参考にしてみて下さい

◆出生と隣合わせの死

現在と違い中世ヨーロッパでは、医療や公衆衛生が未発達であったので寿命は現代に比べて驚くほど短いものでした。また、避妊の手段がなかった為に、現代に比べて驚くほどの多産でありました。そのため、中世ヨーロッパを生きる人達にとっては「生と死」は常に身近な存在であり続けました。

出生に関しての記録によると女性は一般的に平均で5~6人の赤ちゃんを出産していました。出産に危険はつきもので出産の際に亡くなることも珍しいことではありませんでした。戦争で死ぬよりも出産で死ぬほうが圧倒的に数が多い時代でした。

女性は14歳を過ぎると出産が可能となります。そして生涯の半分近くの期間を妊娠して過ごしました。

最近、スイスのチューリヒで墓地の発掘調査が行われ、女性の恥骨の計測から女性一人につき4.2人の赤ちゃんを産んだ結果が出ております。また、埋葬者の50%以上が7歳以下の子供であった墓地がいくつも発見されたそうです。(a)

つまり現在に比べて多産多死の時代であったのです。この時代に産まれたばかりの赤ちゃんにとって、大人まで無事に生きのびることが最大の難関でした。

仮に100人の赤ちゃんが誕生したら、その子供達が2歳を迎える前までに19人が亡くなり、さらに18歳になる前までに27人が亡くなります。無事に20歳まで生き延びて成人になれるのは100人中なんと54人というおよそ半分に過ぎない数です。(a)

これはヨーロッパだけでなく世界中どこでも同じことでした。例えば日本の七五三の習慣は子供が3歳・5歳・7歳まで無事に「生き延びられた」ことをお祝いする文化です。

一般的な家庭では母親が5~6人の子供を出産して、そのうち子供が無事に生き残るのが半分の2~3人。夫婦2人に子供が2~3人の合計4~5人の家族が一般的であったようです。

また、子供が驚くほど多い社会で人口分布図は典型的なピラミッド型でした。下に行けば行くほど人口が多く、人口の半分が14歳以下の子供でした。つまり15歳以上の大人は全人口の半分しかいません。

つまり無事に成人まで辿り着けるのは一握りの幸運な者だけでした。

(参考までに2016年の日本の人口のちょうど半分の年齢は46歳です。また14歳以下の人口の割合はわずか13%に満たない数です。そして20歳以下の人口が18%になります。つまり未成年者が5人に1人しか存在しない子供がいない社会です)

また、中世では、子供は子供ではなく「小さな成人」として扱われていました。現在と違い、学校に行くこともなく農民の子供は小さいころから親たちと一緒に農作業などをして働くように仕込まれていました。

また、子供として扱われる年齢はだいたい15歳ぐらいまでで、貴重な労働力として大人への階段は早かったのです。当然子供の人権などもない時代でした。大人も子供も生きるのにみんな必死だったのです。

◆結婚について

現在の自由恋愛と違い、婚姻は基本的に本人の意思に関係なく両親など家族間の合意で勝手に決められていました。結婚とは個人同士のものではなく家と家同士の結婚でした。そのため、子供の頃にはすでに結婚相手の「許嫁」が決まっていることも珍しくありませんでした。

中世から時代が徐々に経つにつれてこの親同士の勝手な婚約に対して教会が介入するようになります。例え親同士の婚姻であっても必ず最後には花嫁の同意が求められるように教会法の規定が定められる様になりました。

そして時代が進むと更に本人達の意思が尊重される様になります。現在と同じ様に、花婿と花嫁の本人同士の自由意思による恋愛結婚の例も見られるようになります。しかし、それはごく一部のことで現実にはその後も殆どの場合は両親同士が結婚を決めていたようです。(a)

結婚する花嫁、花婿の平均年齢は男性が20~24歳、そして女性が14~16歳でした。ちなみに教会法で定められた結婚の最低年齢が男子が14歳、女子が12歳です。(a)

◆寿命について

中世と言っても地域や年代によって差がある為に資料によって多少のバラツキがあるのですが、大雑把に言えば中世ヨーロッパの平均寿命はごく幸運な場所と時代なら30歳であり、不運な時代と場所なら驚くべきことに20歳であったようです。

いくつかの文献を参考例として挙げれば知のビジュアル百科・中世ヨーロッパ入門によれば、1300年頃の農民は25歳までしか生きられなかったようです。短いと思われるかもしれませんが、当時の農民は食生活が貧しく(特にビタミンとミネラル不足)、厳しい気候で生活し(冷暖房なし・防寒具などの不足)、辛い農作業で身体を酷使していた為と考えられています。

中世の日常生活では平均寿命はわずか25~30歳であったそうです。その最大の原因は地域によっては40%とも言われる乳児死亡率の高さでした。

乳幼児の高い死亡率を除いてみると“幸運”にも成人まで生き延びられた人々の20歳からの余命を調べてみると男性なら47歳、女性なら44歳まで平均して生きられたそうです。(a)

文献によって時代や地域が違うので一概に正確には言えませんが、中世ヨーロッパでは大まかにこのような寿命であったようです。

現代と違い、死は人々の日常生活に当たり前の様に存在しておりました。100世帯ほどの大きな村では平均して18日に1件の割合で葬式が行われておりました。そして同じ割合で子供が産まれていました。平均して年間20回ほどの葬式と同じく20回近い出産があったわけです。

中世は多産多死の時代であっても、そこに生きる人々は開墾などを行い緩やかではありますが13世紀まで人口は着実に増加していきました。

◆病と疫病

中世のヨーロッパにおける最大の歴史的な出来事は1347~1350年のペストの大流行です。黒死病とも呼ばれるこの伝染病によって全人口の30%~50%が死亡したと言われています。

統計にもよりますが、少なくとも人口の3分の1がペストによって死亡したことは疑いのない事実です。その結果、西暦1500年のヨーロッパの全人口は200年前の1300年より大幅に減少しました。

ペストによって多くの死者が出た影響は社会の全ての場面において見ることができます。バタバタと人が死んでいく姿を見て「明日は我が身」と好きなことして遊ぶ退廃的なモラルが発生しました。

(デカメロン ペストから避難した男女10人が邸宅で語り合うという物語)

ボッカッチョの「デカメロン」はその価値観や雰囲気のもとで描かれた作品で当時の人々の生活を垣間見ることができます。また、農民の人口がペストによって半数に激減したことから農村の価値観に変化が生じます。

領主が自らの領地の畑を耕す農民の確保に苦労する様になるのです。この様に地主より農民が有利な状態が出現するようになります。また人口が半分近く減少したことで一人ひとりの個人への富の配分量が増え、豊かになった者も出現しました。ペストの大流行による人口の大幅な現象とそれによる社会情勢の変化はその後のルネサンスの出現に多大な影響を与えました。

◆女性の地位について

現在の男女平等が叫ばれる社会と違い、当時の男女の関係はどうであったのでしょうか。

中世における女性は男性にとっての母親・妻・娘として存在しており、家庭では奴隷も同然でありました。その一方で聖母マリアなどキリスト教の崇拝の対象にもなり、またロミオとジュリエットのジュリエットの様に上流階級である貴族の男性に命懸けで恋い焦がれる存在ともなっております。

この様に文献からだけで女性のありのままの当時の地位や姿を知ることは非常に難しいと言えます。

また、娼婦などは身分制度が厳しい中世にあって時代によっては現代の公務員と同じ様な立場であったりしました。また、市の中でも一部の者しか参加できない公的なお祭りに参加できたりするなど現代のアンダーグラウンドといった雰囲気とは違ったイメージであったようです。

これは中世世界に強い影響力を持っていたキリスト教の中で「マグダラのマリア」が元娼婦でありながら、聖書の中でもとりわけ重要な「イエスの復活」の発見者であったことと関係しております。

彼女がイエスから直接「娼婦であっても救済される」と言われたことで娼婦という職業がキリスト教社会では独特の地位を占めることになりました。(b)

ちなみに中世の墓地の発掘調査では男女の性別の比率が144:100と明らかに男性が多い結果がでております。通常は1:1になりますからこれは明らかに間引きが行われたと考えられます。(a)

他の場所での調査結果でも男女比が1:1.14~1.18ぐらいで男性が優勢であったので間引きは全ヨーロッパで行われたと考えられます。(a)

なぜ間引きをしたのかと言えば女性は田畑を耕す労働力として求められていなかったからです。これは日本の農村でも江戸時代を含めてごく当たり前に見られた光景です。

『参考文献』

基本的に引用を明記していない部分以外は

図解 ヨーロッパ中世文化誌百科 (下)

をメインの参考文献のベースにして書いてます。その他引用は

(a) 『中世の日常生活ハンス・ヴェルナー・ゲッツ(著)

(b) 『西洋中世の男と女―聖性の呪縛の下で』阿部 謹也(著)

などです。文中でも紹介しましたが『中世ヨーロッパ入門 (「知」のビジュアル百科) 』も平均寿命の参考例に使用しました。

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