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~ヒストリアイ~

古代中国がいかに文明国であり超大国であったか

投稿日:2018-01-28 更新日:

この記事の要約

「昔の中国は凄かった」ということを簡単に要点だけをまとめて説明します。人口やGDPの割合などの基本情報の他に、世界三大発明+紙など技術分野におけるテクノロジー超大国であったことを紹介します。
また陶磁器やお茶、絹など豊かな産物を生産し文化水準が高い文明国であったことも紹介します。
その他に科挙を紹介することで(多少香ばしいながらも)露骨な中国ヨイショの素晴らしい記事に仕上げました。

昔は凄かった中国

近年、中国の発展が目覚ましいです。2010年には日本を抜いて世界第二位のGDP国家になり、いずれはトップのアメリカを抜くのかもしれない・・・という驚異の発展を続けております。

そこで今回は中国をテーマに高校生でもわかるように中国がいかに凄い国家であるかということを簡潔にまとめて見たいと思います。

なお、昔の中国と言ってもだいたい紀元前1000年から現在までおよそ3000年近くあるのでどの時代を選ぶかによって数値が違ってくるのですが、ここではあまりこだわらずに大まかに各年代から選ばせて頂きます。

人口とGDPがすごい

まず最初に国力の指標となる「人口」と「GDP」の数値をざっくりと紹介します。現在の中国の人口は13億人ですが一人っ子政策の影響で未戸籍の人もいるために実際はもっと多いです。

歴史的には近代化が始まる前の清朝末期の時点で既に4億人を突破しており、この当時の世界の人口がおよそ12億人であったので3人に1人が中国人という状態でした。

人口だけではありません、アヘン戦争前の1820年の清朝の世界経済に占めるGDPの割合は驚きの33%という数値です。と言っても人口比から考えたら妥当の数値です。現在(2016年)のアメリカの世界経済におけるGDPの割合はおよそ25%なのでその当時の中国はアメリカよりも圧倒的な超大国であったのです。

(出典はこちら

ちなみに中国の最古の人口調査の記録は貝と羊の中国人によると西暦2年、前漢の平帝の時代で5900万という人数が確認できます。ただし、こちらは課税を目的とした戸籍調査なので脱税の為の戸籍漏れが相当あったそうです。ですから実数としては7~8千万人いたと想定されています。日本では邪馬台国が登場する前の時代の話です。

もうメイドインチャイナだと笑わせない!最先端の技術先進国

さて、それではここからは中国の文明的な先進度について語りたいと思います。昔は人口が多くてGDPも多かったので「中国は凄かった」と言われても現在の中国も人口が10億人以上でブッチギリで1位ですしGDPも世界第2位です。

それでは「現在の中国は先進国ですか?中国は先進的な文明国家ですか?」と言われたら疑問が残りますよね。メイドインチャイナと言えば100円ショップで買える安かろう悪かろうの代名詞ですし、昔の中国もただ人口とGDPが高いだけでハイテク製品など持ってない貧乏国の可能性もあるし・・・

そういったわけでそんな疑問を払拭するために、ここでは当時の中国がいかに先進国であったのかを紹介したいと思います。

まず何をいっても中国の文明としての技術レベルの高さを上げるのなら世界3大発明です。鉄砲や大砲のもとになる「火薬」世界中を航海する際に必要な「羅針盤」そして書籍を大々的に出版することを可能にした「活版印刷」中学や高校の歴史の授業でも扱うこれら世紀の大発明の全てがメイド・イン・チャイナなのです。

羅針盤「え?方位磁石じゃん!」と思った方、厳密には違いますが大雑把に「羅針盤=方位磁石」なんです。歴史の先生も厳密には羅針盤って知らないんですよね。だから一言だけでも「羅針盤って実は航海用の方位磁石のこと」って言えば救われる中高生が続出するのに・・・・)

なお、活版印刷で作られる本を印刷するための「紙」を発明したのも中国です。そのため紙も含めて世界四大発明と言われたりもします。

紙を発明、または改良したの後漢の蔡倫という人物です。彼が後漢の和帝に「蔡倫紙」と呼ばれる紙を献上したのが105年のことで記録に残っています。いつ西洋に紙の製法が伝わったかと言うと、751年に唐とアッバース朝との間で起きた中央アジアの覇権争いである「タラス河畔の戦い」で中国人の捕虜に製紙職人がいた事で紙の製造法がイスラム世界に伝わったと一般には言われております。発明から646年後のことでした。

(紙漉きの作業風景)

紙の登場までは中国では木簡や竹簡、西洋では羊皮紙、オリエントではパピルスなどが使用されていたので紙の利便性は明らかでしょう。

西洋諸国は帝国主義の時代に世界各地を侵略して植民地を獲得しましたが、中国が発明した羅針盤を使って航海し、火薬を用いた鉄砲や大砲などで敵を打ち破り、そして紙に印刷された大量の聖書を使って宣教師が各地でキリスト教の布教活動をするなどその活躍の影には中国の技術が使われていたのです。

西洋諸国が憧れ、競って求めた文化水準の高さ

文明・技術に近いのですが中国では歴史的に西洋諸国が羨むような豊かな物品がいくつもありました。まあ特産品のことですね。歴史的にみてその中でも特に有名なものは絹、茶、陶磁器です。

絹は説明する必要もないと思いますが絹の道こと「シルクロード」でお馴染みの品物です。衣服に使われる高級生地ですがその製法は門外不出で西洋では長らくこの絹をどのように作り出すのか謎でした。(日本は弥生時代にはとっくに導入してました、もちろんパクリですけどね)

絹は主に上海近郊の蘇州地域が有名な生産地です。その絹の原料は「蚕の繭」つまり綿や麻の様に植物の繊維ではなく動物のタンパク質が原料となっておりました。

(蚕・英語名は「silkworm 絹虫」繭が絹の原料)

西洋諸国やイスラム国家はまさか原料が植物ではなかったとは夢にも思わなかったでしょう。(絹糸はその性質を利用して外科手術用の糸にも使われます。植物繊維と違いタンパク質なので体内でも拒絶反応が出ずそのまま溶けて身体に吸収されます)

茶はアヘン戦争の原因となったことでも有名な商品です。中国でもお茶は当初は薬として貴重なものとして扱われておりました。例えば三国志のごく最初の場面で主人公の劉備が病気の母親への薬としてお茶を買いにいく姿が描かれております。

日本では鎌倉時代に臨済宗の開祖である栄西が中国から持ち帰り「喫茶養生記」という本を書いております。養生というタイトル通り日本でも当初はお薬でした。

イギリスではこのお茶を購入するのに支払う銀貨が不足したために植民地でアヘンを製造しその代価に当てたことは有名です。中国側がお茶と物々交換したくなるような魅力的な商品がなかったので西洋諸国は銀で取引せざるをえなかったのです。

磁器

(『マイセンの食器』史上初の産業スパイが盗んだのが当時超極秘であったマイセンの磁器製法)

陶磁器、特に磁器は食器ですが美術品でもありました。現在、北宋時代の「汝窯の青磁」は数十億円の価値がでるような貴重な文化財となっております。この磁器はカオリンという鉱物を使って高温で焼かれた焼き物で西洋ではこのカオリンの秘密が長い間謎であったために良質の磁器を作り出すことができませんでした。

ちなみに日本でも磁器の製作は難しく朝鮮出兵の際に秀吉が捕虜にした朝鮮人の陶工を現在の有田に強制的に移住させ磁器を作らせました。これが日本の磁器のはじまりです。

西洋による史上初の磁器はヨハン・フリードリッヒ・ベトガーによってドイツのマイセンで1709年に創り出されました。中国では漢の時代に青磁が作られているのでゆうに1500年以上の遅れです。

ちなみにマイセンの有名な模様であるブルーオニオン(青い玉ねぎ)は当時、ザクロを知らなかった西洋人が中国磁器のざくろの模様を真似て書いたところ玉ねぎだと勘違いしたことに始まります。

(左右の縁にある2つの青い玉ねぎは本当はザクロ)

これら絹やお茶、陶磁器は西洋諸国の貴族や裕福な商人が中国との交易を通じて求めたものです。彼らが商品の対価として銀貨を支払った一方で中国側は、絹はイモ虫の繭、お茶は植物の葉っぱ、磁器は粘土が原料となりますから、ある意味ほぼ無料で銀を得られるという非常に効率の良い商売であったと思います。

この他、中国には満漢全席の名前などで知られる豪華な「中華料理」また司馬遷の史記に代表される国史として編纂された正史24書の「歴史書」など文化水準の高いものがキラ星の如くあります。

現在と変わらない平等な試験制度、科挙が凄い!!

(カンニング用の衣服)

歴史的に有名な中国の制度といえば「科挙」と呼ばれる試験制度があります。これは現在で言う公務員や官僚に相当する政府の役人になるための官僚登用試験なのですが、科挙の方が現在の公務員試験に比較して規模にしても重要度にしても遥かに大きなものでした。

科挙は聖徳太子が遣隋使を派遣したあの「隋」の時代から始まり清朝末期までおよそ1300年近くに渡って行われた試験制度でした。この制度がなにが凄いかというと国家を運営する役人になるにはこの科挙の試験に合格しなければならないことでした。

これは当時としては奇跡と言ってよい制度です。日本で比較すれば平安時代は摂関政治の全盛時代で国家を運営する役人の官位は貴族による世襲によって代々受け継がれていきました。

また、時代が代わって武士の時代である江戸時代でも、将軍以下の大名や旗本などの石高は全て世襲によって決まっており士農工商を含めて基本的に「産まれ」が全ての社会でした。

(科挙の試験場 ここに3日×3の計9日間も閉じ込められ寝食をしながら試験をする。試験中に発狂者が当然のごとく出ます)

日本だけでなくヨーロッパでも貴族による同じ様な階級制度の政治が行われており、イギリスなどは今でも爵位をもった貴族による伝統ある階級社会が維持されているぐらいです。

そんな中で中国の科挙はそういった血統など世襲制度を否定します。そして試験のみに絞った人材登用制度を採用します。

最初の頃、隋や唐の時代はまだ科挙の制度が完全に完成してないため、試験組と旧来の貴族組などに別れていたりもするのですが、宋の時代にはいると科挙のシステムが完成し、試験に合格した「進士」と呼ばれる人達が政治の中心になる進士全盛時代を迎えます。

(最終試験の「殿試」皇帝(黄色い服)が直々に審査をしている)

中国を訪れた西洋の宣教師たちはこの科挙による実力主義の文官登用制度を知った際に文字通り「飛び上がって驚いた」と言いますからいかに科挙が先進的で理想的な制度であったかと言えるかと思います。

こういった貴族などの世襲制度を否定して、実力主義の科挙制度が国民に理解されるのにはある程度国民に対してもそういった文化を受け入れて成り立たせる為の知的水準が必要です。

例えば仮に鎌倉時代の日本で科挙が導入されたとして京都の貴族ならまだしも日本全土で試験を受けるに足りる知的水準をもった教養人がどれほどいたのか想像するのは難しいですよね。

ですから科挙を制度として成り立たせるためには一定レベルの文明生活を維持していなければ、試験による登用制度を行うことができません。そういった意味でも中国は国家レベルにおいても知的水準、文化的教養度が高い国であったのです。(ちなみにこの当時のヨーロッパでは文字を書けない王様(例→カール大帝)がたくさんいました。というよりむしろ文盲を誇っていたぐらいでした)

ただし、この科挙制度も時代が経つにつれて弊害が見られるようになります。長くなるので簡単に説明するとまず「試験成績さえ良ければいい」と言う現代で言う「偏差値重視主義」に陥ります。

また試験内容が詩の作文能力や道徳的な論語の内容を求めたものになった結果、政治を行う上でより重要な実学に沿った有能な人物が採用されないなど儒教一辺倒の弊害が出始めます。(早い話が有能な実務家ではなく頭でっかちの学者ばかりの政府になります)

(科挙の答案、手書きだけど印刷みたい・・・ 出典先

また、とにかく出世に関しても科挙の成績順という試験万能主義になるので近代以前に重要であった軍事などの武力を扱う武官が地位が低く、発言も軽視されるなど(けど歴代の皇帝は武力によってその皇位を簒奪するのですが・・・)本来なら国を守るべき武将の活躍が妨げられるなどの弊害もでました。

その結果、歴代の中国王朝は超大国であるにも関わらず戦争に非常に弱くモンゴル人の「元」女真族の「清」日本人の「日帝」など外国人による侵略が目立ちます。

とにかく中国では歴史的にみて清代以降は特に科挙が重視した理想論的な儒教とその儒教の伝統を守ることに固執しました。これが近代に入り中国の失速を産む原因の一つになったのではと考えられます。

儒教は社会秩序の維持など良い面なども多いのですが「新しい物への対応」は苦手であるので、現在の日進月歩で文明が進みあらゆる物や価値観が目まぐるしく変化する社会にはうまく適合できずそれが清朝以降の中国の停滞を引き起こしたのだと思います。

(※科挙に関しては漫画の「新☆再生縁~明王朝宮廷物語~」が詳しく扱っています。このコミックの「巻末おまけ」に簡潔に説明されています。マンガなので読みやすいです。それとこのマンガは科挙や進士の話などがメインなので凄く勉強になります。あと宦官や後宮なども)

結び

いかがだったでしょうか。昔は凄かった中国。人口が多く豊かで産物が溢れる国であったのになぜ西洋のように産業革命や近代化が発生しなかったのか。そしてなぜ西洋諸国に侵略されたのか。これは現在も大きな疑問として数多くの人が答えを求めるために研究をしております。

もっとも、歴史的な長いスパンでみれば中国が列強の侵略下に置かれ惨めな思いをしたのはアヘン戦争以降の150年ほどの期間(1850~2000)です。3000年の歴史からすれば割とよく見られる王朝と王朝の間の混乱期による国力の低迷時期とも言えることもできます。(例→魏晋南北朝、五胡十六国)

これからまた唐や清の様に中華人民共和国が大いに発展し強大な王朝となって200~300年の間、世界に君臨する可能性もあります。ただし同じ様な超大国のアメリカと統合したヨーロッパも中国にとって覇権争いの手強いライバルとなりそうです。

現状はメイドインチャイナと言うと粗悪品のイメージですが歴史的には中国製と言えば、ヨーロッパ人にとっては絹や陶磁器などオリエントを代表する憧れの存在でした。

今後はこのメイドインチャイナがどのようなイメージになっていくか。ハイテク技術、最先端、高品質、信頼性といったイメージに移り変わっていくのか(正確にいえば以前のイメージに戻る)注目してみたいと思います。

『参考文献』

『貝と羊の中国人』加藤 徹 (著)

『新☆再生縁~明王朝宮廷物語~』滝口 琳々 (著)

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