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起業家精神を産んだ「フロンティア・スピリッツ」とは何か?

投稿日:2016-09-15 更新日:

(西部開拓史といえば、カウボーイ、シェリフ、そしてアウトロー)

アメリカの西部開拓史を語る上で欠かせない言葉が「マニフェスト・デスティニー(Manifest Destiny)」と「フロンティア・スピリッツ(Frontier Spirit)」の2つの言葉です。

日本語に訳すと「明白な運命」と「開拓者精神」と表現されますが、今回はその中から「フロンティア・スピリッツ」についてごく簡単に説明してみたいと思います。

フロンティア・スピリッツとは?

フロンティア、日本語で言えば未開拓地と呼ばれたアメリカの辺境地域は入植者達にとって驚きの土地でした。まず「無法地帯」になるので人間社会における従来の社会通念は通用しなくなります。例えば警察が存在しないので自分の身は自分で守る。また、その土地に地盤を持つ貴族や旧家が存在しないために、ヨーロッパでは古くから歴史的に存在する「階級」というものがありませんでした。

(アウトローのガンマン 西部劇の定番ビリー・ザ・キッド)

そんな開拓地では畑をつくり、収穫をより多くした人が優秀な人物とみなされます。新しい大地では、参考になる見習うべきお手本もないので入植した人は皆が手探りで土地にあった作物などを作ってみます。

手探りなので失敗するのは当たり前です。失敗することは恥ずかしいことではなく当たり前の事になります。何度何度もいろんな方法を繰り返して試行錯誤をします。大切なことは同じ過ちを繰り返さないことです。

そういった中でフロンティアでは非常に実用的でプラグマスティックな考え方が生まれました。これがフロンティア・スピリッツです。失敗を恐れない実行力、未開の土地に分け入っていく勇気、諦めずに挑戦すれば必ず成功するという楽観主義などです。

そういった開拓者において求められた社会観念「フロンティア・スピリッツ」は開拓地のみならずアメリカ全土でも共有されるようになります。(というか東海岸の一部地域を除いて全ての都市は開拓地が発展したものです)

そして開拓時代が終わった現代のアメリカにおいても「起業家精神」などに見られるよう社会の奥深くまでこの「フロンティア・スピリッツ」の価値観が根付いています。

「あれこれ考えるより、まずをやってみる。そして失敗を恐れずに挑戦してみる。失敗したら別の方法を考える。」

こういった典型的な開拓者の精神は生まれや学歴などが意味を成さない完全に実力主義の社会となります。その為、旧来の名門一家で没落する家も珍しくありませんでした。この新しい社会体制に適応できなかった一番顕著な例として名門中の名門、アダムス一家のヘンリー・アダムスを見てみたいと思います。

大統領になれず人生に失敗したヘンリー・アダムス

アダムス一家は歴代の大統領を輩出した旧体制の名門中の名門一家でした。そんな一家の中で曽祖父は第2代大統領ジョン・アダムズ、そして祖父は第6代大統領ジョン・クインシー・アダムズ、父は駐英公使であったチャールズ・アダムズという当時において最高の家柄に生まれたのがヘンリー・アダムスでした。

(ヘンリー・アダムス・誰もが将来大統領になると思っていた)

彼はハーバードを卒業しヨーロッパ留学という一流の学歴を持って1868年にアメリカに意気揚々と帰国するのですが、そんな古典的教養人である彼を当時のアメリカ政界は必要としませんでした。

南北戦争後の政治的混乱の中で大統領に就任したのはリンカーン、ジョンソン、グラントという丸太小屋出身の無教養ながらも成り上がった人々でした。ジョンソンに至っては文字も書けなかったと言われてる人物です。

建国期まで通用していた従来のヨーロッパ的な古典的教養社会ではなく、フロンティア・スピリッツに代表されるプラグマスティックな実力社会となっていたのです。

彼のように「知」を力としてのし上がっていく人物が政治権力に入る隙間が当時のアメリカには全くなくなっていたのです。これは彼のみならず、建国の父を祖先に持つ名門一家全体に言えることでした。この傾向は西部開拓時代が収束する第一次世界大戦頃まで続くことになります。

自分の人生に絶望したヘンリー・アダムスはその自身の人生の失敗をまとめた「ヘンリー・アダムスの教育」という本を出版します。出版後すぐに彼は亡くなるのですがこの作品はその後ピューリタン賞を受賞します。

19世紀後半のアメリカ政治の内情を知る上で非常に重要な書物で、この作品は現在でもノンフィクション作品の中ではアメリカ史において3本の指に入る不朽の名著です。知的エリートの面目躍如たる作品でありましたし、当時においても教養人が必要であった強烈な証拠となるものでした。

大統領にはなれませんでしたが、ある意味大統領以上に歴史的な業績を残しました。しかし、当の本人であるヘンリーは後世の評価を知ってもおそらく喜ばなかったことだろうと思います。

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