日米比較シリーズ 「物量に負けた」全4回
日米比較のシリーズ 第3回目は「物量」をテーマにして全部で4つの投稿からなっています。全て独立した内容となっているので個別に見ても問題がないよう構成しておりますが、ご興味があれば他の投稿も参考にしてみて下さい。
なぜ太平洋戦争で敗北したのか?
NHKの特集などで太平洋戦争の敗北の原因を当事者らに聞くと「アメリカの圧倒的物量に負けた」という答えがオウム返しの様に言われるのをよく目にします。でもこれって言外に「物量さえまともにあれば負けなかった」と捉えることができます。仮にハンデがなくて同じ土俵で戦っていたら負けなかったという自負心ですよね。
しかし冷静振り返ってみると「物量がアメリカと同じだったら果たして勝てたのか?」と疑問に思うことが多々あります。
確かにアメリカの圧倒的な物量に負けたのは事実です。というか、むしろ最大の要因だと思います。太平洋戦争の行方を決めた航空戦をみても、圧倒的な生産数を前にしてこれに打ち勝つ方法を見つけることができません。
Wikipediaにある第二次大戦中の航空機の生産数を参考にしてみると
アメリカ 30万3665機
日本 7万9123機
アメリカが30万機と日本の7万機の約4倍の生産数となっています。これだけ生産数に差があればどんなに頑張っても絶対に勝てないですよね。
しかしながらこの敗北の原因を「物量」の一言で片付けてしまうと、そこで思考は停止してしまいます。物量という言葉はいわば魔法の言葉です。本当の意味での敗因に臭い蓋をして真相を追求せずにうやむやのままにしてしまいます。
これまで米国が日本より優れていた点として
日米比較① 階級制度を無視した緊急時における組織の柔軟性
日米比較② 人命尊重を含めた効率的なパイロットの育成法
などを述べて来ましたが今回はその本丸である物量そのものに焦点を当ててみたいと思います。
そして太平洋戦争の趨勢を決めた戦場の主役である航空機に焦点を絞って「日本の航空機生産の問題点は何であったのか?」という疑問を出発点としていかにアメリカが効率良く大量生産を行うよう努力しており、また日本がその努力を怠っていたのかを検証してみたいと思います。
今回は分量が非常に多くなったのでテーマを3つに分け
1.効率的な生産を邪魔した陸海軍の組織的な対立
2.奇跡のエンジン「誉」にみる航空機エンジンの問題点
3.航空機用機銃生産の非効率性について
これらを個別に見ていくことでアメリカがいかに物量にこだわっていたかを考えてみたいと思います。